社会保険適用の拡大は配偶者控除廃止とセットにすべきだ
厚生年金の適用対象者が短時間労働者にも拡大しています。ポイントは従業員が501人以上の企業で年収106万円以上など、5つの条件がありますが、主に大企業のパート労働者への影響が大きいものと想定されています。
協会けんぽの例で単純に考えますと、パート従業員が社会保険に加入した場合、会社側は厚生年金の折半の負担分で最低でも8,000円はかかります。加えて、健康保険にも加入することになるため、4,000~5,000円程度の負担増になります。
つまり、従業員が一人社保に加入することにより、会社負担分で最低でも1万円の負担増となってしまうわけです。今回の条件が501人ということですので、会社経営者側からすれば、法定福利費として月に直すと500万円以上の負担増につながる可能性があります。
この負担増は会社にとっては特に何のメリットもなく、単に従業員が将来もらえる年金を増やすための経費です。また、従業員側でも手取りが減ってしまうため、会社が従業員のために負担はしているものの、喜んでもらえるケースは案外少ないものと思います。
この500万円を将来もらえる年金として福利厚生するぐらいでしたら、今すぐに時給を上げてやって使った方がまだ従業員の士気があがるはずです。
なので、たとえ、非正規雇用者やパート従業員が年収106万円以上で働くことを希望したとしても、それ以下の労働時間へ制限されてしまう可能性が高いと考えるのが妥当かと思います。また、パート従業員側でも、夫の扶養に入っていればこれらの負担は回避できますので、加入条件からはずれるよう106万円以内に制限して働く人も多くなってくるはずです。
また、健康保険について、今までは130万円の壁まで働けていたわけですが、これが106万円まで下がってきますので働くのを制限する人が多くなってくるかもしれません。
つまり、働いたら損であり、働かせたら損にもなりますので、いわゆる働いたら負けの社会になってしまうことになります。結局、経営者側も従業員側も働く時間を制限する方向へ動くことは必至と考えてもよいでしょう。
これでは女性の労働力の活用にはなりようがありません。
もし、これをやるのだとしたら、配偶者控除と健康保険の扶養を一律ですべてなくさなければ意味がないです。最近になって配偶者控除の見直しの話が出てきていますが、これとセットにしてやらないとかえって逆効果ではないかと思います。
ただ、影響があるのは約25万人といわれており、大部分のパート労働者には特に何の変更もなく、影響があるのはせいぜい数%程度といわれています。
今後、政府がどういった対応をしていくのかに注目していきたいと思います。